ニューヨーク州、3つのカジノ計画を正式に推薦
2025年12月1日、ニューヨーク州ゲーミング施設立地委員会(New York Gaming Facility Location Board)は、長年議論されてきたダウンステート(ニューヨーク市南部地域)のカジノライセンス候補として、クイーンズとブロンクスで計画が進む3つの大型リゾート案を全会一致で推薦しました。
この動きにより、ニューヨーク市で初めて本格的なカジノを含む統合型リゾート(IR)が誕生する可能性が大きく高まっています。
推薦された3つのカジノ開発計画
1.Metropolitan Park(クイーンズ)
クイーンズのシティ・フィールドに隣接する約50エーカーの土地を再開発する計画で、ニューヨーク・メッツのオーナーであるスティーブ・コーエン氏と Hard Rock International が主導しています。
巨大ホテルやエンターテインメント施設、商業エリア、公園スペースなどを備えた大規模なIR構想で、投資額は約80億ドルに達するとされています。周辺地域の再活性化が期待される一方で、既存の公共スペースの転用や交通負担の増加などを懸念する声も残っています。
2.Resorts World New York City(クイーンズ)
アクアダクト競馬場に隣接し、すでにスロットを中心とした「ラシーノ」として営業している同施設を、フルカジノへ拡張する計画です。
既存のインフラを活かせるため、ライセンス取得後わずか90日でテーブルゲームの導入が可能とされ、最も早ければ2026年に本格稼働できる見通しです。また、大規模ホテルや約7,000席規模のエンターテインメント会場の建設も予定されており、観光拡大への寄与が期待されています。
3.Bally’s Bronx(ブロンクス)
ブロンクス区の Ferry Point Park(旧トランプ・ゴルフリンクス跡地)を活用し、約40億ドル規模の大型複合施設を建設する計画です。
ホテル、商業施設、イベント会場、ゴルフコースなどを備えた広大なリゾートで、地域住民向けのコミュニティ基金の創設も提案されています。しかし、公園の民営化や交通負担増加への懸念を示す声も根強く残っています。
10年間で144億ドル規模の経済効果を試算
予測される収入と経済インパクト
州当局の試算によると、3施設の導入により今後10年間で約144億ドルの経済効果が生まれるとされています。
- カジノ税収:約70億ドル
- ホテル・物販などからの税収:約59億ドル
- ライセンス料:合計15億ドル
日本円換算で総額約13兆円規模となる巨額の財政効果となり、その多くが公共交通機関MTAおよび州の教育予算へ配分される見込みです。ホークル州知事は「交通と教育に新たな安定財源を確保できる」として、歓迎の意を示しています。
地元住民からの懸念と当局の対応
経済効果が期待される一方で、「ギャンブル依存症の増加」「治安悪化」「交通混雑」「緑地減少」などを懸念する住民の声も強く上がっています。公聴会では、反対派が激しく抗議する場面も報じられています。
依存症対策は必須要件
立地委員会は「すべての事業者に依存症対策プログラムと地域支援策の導入を厳格に求める」と声明を出し、地域の不安に一定の配慮を示しました。
今後のスケジュール
最終承認はゲーミング委員会が判断
今回の推薦はあくまで「候補としての承認」であり、実際のライセンス付与は New York State Gaming Commission が最終的に決定します。
現時点では2025年末までに正式承認が行われる見通しで、大きな問題がなければ推薦案がそのまま通過すると見られています。
開業時期の見通し
- Resorts World: 最速で2026年に開業する見通しです。
- Metropolitan Park / Bally’s Bronx: 2030年前後の開業が予定されています。
複数の大規模IRが揃うことで、ニューヨーク市はラスベガス、マカオ、シンガポールに次ぐ国際的なカジノ・エンタメ都市としての地位を確立する可能性が高まっています。
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